
アメリカ心理学会のサイトに
A Growing wave of online therapy
という記事が掲載されていました。
Growing wave
って、「波が盛り上がってきている」という感じですね。
電話やウェブカメラ、Eメール、テキストメッセージなどを使った遠隔心理学(telepsychology)サービスは、軍のメンタルヘルス対策として20年以上前から活用されていたそうです。
近年、スマートフォンが普及して一般でもこうしたテクノロジーを介したセラピーが拡がってきているとのこと。
非同期(チャットみたいな即時的なやりとりではなくてタイムラグがあるという意味)のメッセージを使ってオンラインカウンセリングを始めたセラピストのケースが紹介されていました。
オンラインセラピーでも、対面でも、悩みごとには大きな違いはなく、ストレスや不安、人間関係の悩みなどがテーマとなるのです。
カウンセラー・セラピストは、問いかけたり、フィードバックしたりしながら、クライエントを洞察に導くのです(あるいは情報提供や心理教育をしたり、対処スキルを学習する手伝いをする)。
オンラインセラピーの利点
で触れたのと同じようなことが、オンラインセラピーの利点として挙げられていました。
- スケジュール調整しやすい
- 自宅などプライヴァシーが保たれたところから相談できる
- メンタルヘルスケアが一般に普及しやすい(特にデジタル世代に)
- 地理的、あるいは抵抗感などの障壁を超えやすい
といったことです。
オンラインセラピーの効果
こちらも、
オンラインカウンセリングって本当に効果あるの?という疑問に答える4つの研究を紹介
で取り上げました。
アメリカ心理学会のサイトの記事では、テキストメッセージを使ったカウンセリングでも効果が認められた、との最近の研究が紹介されています。
問題点や限界
オンラインセラピーの問題点、あるいは限界としては、
・重篤な精神疾患や依存症などには適用できない
・自殺などのリスキーな状況への対応ガイドラインが不十分な会社もある。
・HIPAA/HITECH法の問題
といったことに触れられています。
テキストやチャットで「死にたい」と言われたとき、そのリスクをどうアセスメントするか? あるいは、カウンセラーが希死念慮について尋ねて「大丈夫です」と返ってきたら、それを額面通り受け取っていいの? といったことが問題となるでしょう。
HIPAA法とは米国の医療情報保護に関する法律ですが、
スカイプカウンセリングと個人情報保護の問題(HIPAA法との関連で)
でも取り上げました。
アメリカではカウンセラー・セラピストのライセンスが州ごとに定められているので、州をまたいでのオンラインセラピーにはいろいろと問題が生じるようです。
クライエントが住んでいる州のライセンスをセラピストが持っていなければならないということになっているとのこと。
米国在住の日本人が日本のオンラインカウンセリングを利用するといった場合にも、アメリカのその州の資格を持っていないと問題になる可能性がある、ということでしょうか。
記事の結論としては、インターネットなどのテクノロジーを使ったメンタルヘルスケアを企業が推進する際に、サイコロジストがもっとリーダーシップを発揮した方がいいだろうということでした。
企業としては利潤や便利さを追求しますが、サイコロジストがプライバシーや倫理的な問題についてもちゃんと意見を述べるべきだろうと。
アメリカ心理学会の遠隔心理学プラクティスのガイドラインと、遠隔精神保健研究所(でいいかな)のサイトへのリンクがありました。
APA’s guidelines for telepsychological practice
www.apa.org/practice/guidelines/telepsychology.aspx
TeleMental Health Institute
http://telehealth.org/
また、人気のあるオンラインセラピーサービスの方法やコストなどのリストも挙げられています。