メールカウンセリングの効果と限界

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メールカウンセリング

この記事では、メールカウンセリングの効果と限界、メリットとデメリットについてお伝えします。

インターネットやスマートフォンの普及

ここ10年ほどで、インターネットやスマートフォンの普及率は劇的に上がりました。

たとえば、2016年における「スマホ」の所有率は70.7%なのだそうです(1)。

また、2015年の総務省の調査では、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の利用状況は、LINE(37.5%) 、Facebook(35.3%)、Twitter(31.0%)とされています(2)。

 

インターネットを介した相談活動

コンピュータやインターネットを介した非対面型のコミュニケーションには、電子メールや掲示板、チャット、テレビ電話などさまざまな手段が含まれています。

インターネットやスマートフォンの普及により、メールやチャットなどを利用したカウンセリングも徐々に増えてきました。日本国内では、1990年代くらいからメールや掲示板、チャットなどを媒介とした相談活動は始まっていたようです。掲示板は、同じ悩みをもつ人たちが自由に意見交換をしたり、情報提供や支え合いの場として活用されていました。

メールカウンセリングとは、電子メールを使って心理的な支援を行なう活動です。学生相談でのメールカウンセリングや不登校のメール相談などの報告例があります。

対面でのカウンセリングの導入や補助として電子メールを用いたり、あるいはもっぱらメールによるやりとりが中心のカウンセリングもあります。

 

メール相談、メールカウンセリングの特徴

メールカウンセリングには、次のような特徴があります。

  • 対面での相談と比べて敷居が低い
  • プライバシーや匿名性が保たれやすい
  • 時間や場所の限定なく相談することができる
  • 何らかの障害で発話が困難だったり、聴覚障害があっても可能
  • 文章を書くことによる感情表現
  • 問題を整理して、客観的に見つめ直す
  • 自分自身の思考のプロセスを眺めることによる内省
  • カウンセラーのコメントや助言も、読み返すことができる

こうした特徴は、メールカウンセリングのメリットになります。しかし同時に、デメリットでもありうるでしょう。継続的な相談になりにくいことや、返信までのタイムラグが生じること、危機介入の難しさ、メールのセキュリティ(情報の漏洩や不正アクセスなど)の問題があります。また、文字だけのコミュニケーションであるための困難や限界も当然あります。間合いや表情、声のトーンといった情報を、相談者もカウンセラーも使うことができないのです。相談する方にも、文字で出来事や考え、感情を表現する力が求められます。

一方で、メールの持つ特質によって、対面のカウンセリングより自己開示がしやすいこともあるでしょう。福田は次のように述べています。

電子メールのもつ匿名性・非対面・文字コミュニケーションという特質によって、通常の対面型心理面接では十分なラポールが形成された後に核心として語られる本質的な問題などが、メール相談では、いきなり初期の段階で語られることが多い。これは非対面と匿名性によって自己開示がしやすくなることによる。また、書くという行為そのものが私的自己意識を高めるためだとも言える。このことは対面型よりもメール相談のほうが面接の展開が早まり、必然的に終結までの回数も少なくなることが予想される(3)。

自己開示がしやすくなるということは、同時に相談者が自分自身を見つめるきっかけにもなるということです。メールカウンセリングによって、内省や洞察が促進されるということは十分考えられるのです。ただし、相談者の健康度や内省力は十分でない場合は対面でのカウンセリングの方が望ましいと考えられます(4)。

 

物語づくりとしてのメールカウンセリング

カウンセリングや心理療法は、来談される方が自分自身や関わりのある人々について「語る」という営みです。精神分析やユング心理学、あるいはナラティブセラピーといった心理療法の考え方では、心理療法は「人生の物語を語り直していく作業」ととらえられます(5)。

これはメールカウンセリングでも同じです。即興的なやりとりのなかで物語を紡いでいく対面での心理療法と比べて、メールカウンセリングはより独白的に進んでいくと田村は書いています。

電子メールではモノローグ的に進めていくので、新しい自分の物語を構成する上で、クライエント自身がより能動的に、中心となって語り継ぐことができる。セラピーのはじめ、クライエントは問題や悩みに満ちた物語を語る。それを受け取ったセラピストは返事という「語り」を通して押し広げていく。クライエントが気づかない別の側面に明かりを照らしたり、クライエントによって語られていない闇の部分も語るよう働きかける。それも、物語の一部ではあるが、あくまで主体はクライエントの語りである。それに反応して、再び語り始めるクライエントの物語は、はじめの物語から多少ずれてゆき、その繰り返しの中から、新たな物語が出現する(6)。

なぜ「物語」がカウンセリングにとって、あるいは人生にとって大切なのでしょう?

犬や猫などの動物は、物語とは関係なく生きています。ところが私たち人間は、「私は愛されている」「自分は不幸な人間だ」「まあまあ幸せだと思う」といった物語によって方向づけられています。

物語を、「言葉」と言い換えてもいいでしょう。

たとえば、健康診断の後、お医者さんから「癌がみつかったので余命1年です」と告げられたとしたらどう思うでしょうか? きっと、それまでとは人生や世界が大きく変化するでしょう。あるいは恋人から「別れたい」と短いメールが届いたら? それとも待ち望んでいた赤ちゃんを授かったとの知らせを受け取ったとしたら?

こんなふうに、一言の言葉でも私たちの体験や生活はずいぶん影響されるのです。

 

 

【註】

(1)博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2016」時系列分析より

(2)平成27年度版 情報通信白書

(3)福田周「メール相談とその可能性」『電話相談の考え方とその実践』村瀬嘉代子、津川律子編、金剛出版、2005年、147頁

(4)福島裕人「メールカウンセリングの現状と可能性」東海学院大学紀要6(2012)

(5)かささぎ心理相談室「物語を癒す」

(6)田村毅「ナラティヴ・セラピー(社会構成主義)としてのメールカウンセリング」『現代のエスプリ 418 メールカウンセリング』至文堂、2002年、82頁

 

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