カウンセリングは宿題(ホームワーク)によって効果が増すか

カウンセリングは、宿題(ホームワーク)によってその効果が高まります。具体的にどのようなホームワークがあるのか、どのように取り組めばいいかについて説明します。

 

カウンセリングは面接の「あいだ」が大切

さまざまな学派の心理療法に共通する要因は何か、ということを調べたよく知られた研究があります(1)。それによると、心理療法(あるいはカウンセリング)で「効果をもたらしていること」として次の4つが挙げられています。後ろの数字は、その要因が治療効果に占めている割合です。

  1. 治療外のこと・・・40%
  2. 治療者−患者関係・・・30%
  3. 治療に対する期待・・・15%
  4. 治療技法・・・15%

「治療外のこと」とは、クライエント(相談者)がもともともっている強みとか本人のがんばり、あるいは偶然の出来事などを意味しています。偶然の出来事とは、たとえば「たまたま助けてくれる人が現れた」とか「悩んでいた問題がひょんなことで解決した」といったことです。こうした「治療外のこと」が40%も占めているんですね。そういえば、河合隼雄先生がどこかで「カウンセラーは偶然待ちの商売」と言っておられました。確かサリヴァン(アメリカの精神科医)も、「回復には面接と面接のあいだの時間が大切」ということを書いていたと思います。

ついでに言うと、「治療者−患者関係」というのは信頼関係を、「治療に対する期待」とはクライエントが「カウンセリングによってきっといい方向に行くにちがいない」といった希望をもてるということです。さまざまなセラピー技法が15%しか占めていないというのは、カウンセラー/セラピストとしては少しがっかりなところもありますが、「信頼関係を築きつつ希望を育て、クライエントが自分の強みを活かしたすことをサポートする」のが大切だということですね(2)。

 

カウンセリングと宿題(ホームワーク)

カウンセリングでは「宿題(ホームワーク)」が出ることがあります。これは、上述の「治療外のこと」に積極的に介入することで、カウンセリングの効果をより高めようという工夫です。正式な精神分析療法では、週に4回〜5回もの面接を行ないますが、多くのカウンセリング・心理療法はせいぜい週1回、あるいは隔週などで実施されています。だから面接のあいだにクライエントが取り組むこと(あるいは偶然をうまくつかまえること)がより重要になってくるのです。

カウンセリングのあいだにホームワークに取り組むことで、効果を高めることができますし、自分を見つめる能力や困りごとへの対処スキルが向上します。「この出来事や気持ちを、次回カウンセラーにどんなふうに話そうか」「前回のカウンセリングで話したことは自分にとってどんな意味があるんだろう」と想いをめぐらすことも、悩みの解決や心の成長につながります。

認知行動療法は行動や思考の記録などのホームワークを積極的に使うことで知られています。ユング派の心理療法などでいわゆる「夢日記」が使われることがありますが、これも宿題の一種でしょう。「何かヒントを与えてくれるかもしれないので、印象的な夢を見たら覚えておいてください」と伝えることもホームワークです(3)。

他のアプローチでも、「うまくいったこと(例外)を探してください」とか、「思い切って気持ちを伝えてみてください」といった指示が使われることがあります。

ホームワークとしては、次のような課題が挙げられます。

  • リラクゼーションやストレスマネジメント
  • 日誌(活動や気分、睡眠などの記録)
  • 散歩などの運動
  • マインドフルネス瞑想
  • 読書療法(心の健康に関する本などを読む)
  • 筆記療法(特定のテーマで文章を書く、あるいはメールや手紙などを書く)
  • アートセラピー(写真を撮る、絵を描くなどなんでも)
  • 園芸や生き物の世話など
  • 人と関わったり、コミュニケーションをする

ひとりひとり、必要なことや向いていることは違います。カウンセラーと話合いながら、自分にあったホームワークに取り組むのがいいでしょう。

「宿題」と名前がつくと、「できなかったらどうしよう」「カウンセラーに怒られるのでは」と心配になる人もおられるかもしれません。でもカウンセラーは(めったに)怒ったりはしませんのでご安心ください。できなかったらそれはそれで、また無理のないことは何かをカウンセリングで話し合うことに意味があるのです。

 

宿題(ホームワーク)の効果

では、ホームワークに取り組むことでどのような効果が期待できるのでしょうか?

研究では、ホームワークが心理療法の効果を高めることが確かめられています(4)。クライエントがきちんとホームワークをするほど、心理療法で得られる結果もいいのです。

カウンセリングは日常生活から離れたところで行なう一種の「思考実験」とも言えます。自分や普段の人間関係を少し離れて見つめてみて、「こうかな」「ああかな」「こうすればどうかな」などと考えたり、想像してみるのがカウンセリングです。口に出せずに心残りだった言葉を言ってみるといった「実験」をすることもあります。実験だからこそ安全にできるのですが、思考実験してみたことを実際の生活のなかで試みてみるというチャレンジが必要なこともあります。そうすることで、現実の人間関係や状況が変化していくからです。

カウンセリングには、「新しいスキルや知識を学ぶ」といった側面もあります。宿題には、学んだことを身につけるための「実地訓練」という意味もあります。畳の上の水練だけでは泳げるようにならないでしょう。日常生活で練習を続けることで、たとえば「自分の心を見つめる」「考え方の癖に気づく」「気持ちや考えを上手に伝える」といったスキルが身につくのです。

カウンセラーに頼ったり、依存するのではなく、「自分でやってみたらうまくいった」「新しいスキルでうまくやれた」というほうが、より自信や自己肯定感をもつことにつながりますし。

また、カウンセリングが終わってからもずっとそのスキルを活用することができるのです。

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かささぎ電話相談室では、「読むこと(読書療法)」や「書くこと(筆記療法)」をホームワークとして活用します。お気軽にお問い合わせください。

 

【註】

(1)Lambert, M. (1992) Psychotherapy Outcome Research: Implications for Integrative and Eclectic Therapists. In Handbook of Psychotherapy Integration, (Eds) Goldfried, M. & Norcross, J., Basic Books

(2)「治療外のこと」が40%も占めているということを、「じゃあカウンセリングなんてあんまり意味ないじゃないか」ととらえることもできるし、「60%はカウンセリングがいい影響を与えている」と考えることもできます。1日8時間くらい仕事や勉強などをしているとして、週56時間。週1回1時間のカウンセリングに行くとしたら、56分の1です。割合にしてみると1.8%ほど。それなのに改善の6割がカウンセリングの効果なのだとしたら、捨てたもんじゃないと言えるかもしれません。

(3)Nikolaos Kazantzis, Frank M. Dattilio(2010)Definitions of homework, types of homework, and ratings of the importance of homework among psychologists with cognitive behavior therapy and psychoanalytic theoretical orientations, Journal of Clinical Psychology, Volume 66, Issue 7 July 2010 Pages 758–773

(4)Nikolaos Kazantzis, Georgios K. Lampropoulos(2002)Reflecting on homework in psychotherapy: What can we conclude from research and experience?, Journal of Clinical Psychology, Volume 58, Issue 5 May 2002 Pages 577–585