呼吸法を学ぶ本ーパニック、フラッシュバックへの対処として

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マインドフルネス呼吸法

呼吸と生命・精神

英語では呼吸のことをbreathingとかrespirationといいます。レスピレーションという言葉の語源は、精神や精霊を意味するスピリットや、インスピレーションと共通しています。また、インスパイヤーという動詞には、「息を吸う」という意味に加えて「心を奮い立たせる」「勇気づける」「生気を与える」といった意味も重なっているそうです(1)。ふだんはあまり意識することはありませんが、呼吸とは私たちの生命や精神に大きな影響を与えています。

不安や怒り、抑うつへの対処スキルとしての呼吸法

不安や怒り、抑うつといった感情への対処スキルとしても、呼吸法はよく用いられています。最近よく聞く「マインドフルネス瞑想」でも、今ここの呼吸に気づくことが重視されています。

「息を合わせる」「息を呑む」「息を殺す」など、日本語には心理状態、あるいは人間関係を言い表す呼吸と関係する言葉がいくつもあります。恐怖を感じるような出来事に遭遇したとき、私たちは息を呑んだり、殺したりします。不安が続いていると呼吸は浅くなり、「息が詰まる」のです。PTSDなどのトラウマ反応(フラッシュバックや解離など)や、パニック障害で過呼吸を起こしたときにも、息苦しくなります。そんなときには、まずはゆっくり穏やかな呼吸を取り戻すことが大切です。

サイコロジカル・ファーストエイド』という災害、大事故などの後の心理的援助についての本には、「リラクセーションのためのヒント」として呼吸法が紹介されています(本としても出版されていますが、兵庫県こころのケアセンターのサイトからpdfファイルでダウンロードすることもできます)。まずはそれから紹介しましょう。

 

リラクセーションのための呼吸法『サイコロジカル・ファーストエイド』から

災害や事故などの大きなストレスやトラウマとなる出来事に遭遇すると、不安になったり、緊張を感じるのはあたりまえです。できるだけ気持ちを穏やかにするために、リラクセーションの方法をいくつか知っておくと役に立ちます。リラックスするとよく眠れるようになり、生きていくための元気も取り戻すことができるからです。

リラクセーションの方法には、運動や瞑想、ヨガ、呼吸法などがありますが、『ファーストエイド』に紹介されている基本的な呼吸法は、どんなときにも活用できるでしょう(仕事のストレスにだって使えます)。

  1. 鼻からゆっくり息を吸ってください――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、気持ちよく空気で 満たします。
  2.  静かにやさしく、「私のからだは穏やかに満たされています」と自分に語りかけましょう。今度は口から ゆっくり息をはきます――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、すっかり息をはききりましょう。
  3. 静かにやさしく、「私のからだはほぐれていきます」と自分に語りかけます。
  4. ゆったりとした気持ちで、5回繰り返しましょう。
  5. 必要に応じて、日中に何度でも繰り返してください。

個人的な好みとしては、吸うことからではなく「吐く」ことから始める方がいいと思います。「呼吸」という文字は、呼気(吐く)が先ですよね。吸う方から入ると、うまくできない人もけっこういます。まずはゆっくりと吐き出すと、自然と深く息を吸うことができます。

子どもたちに呼吸法を教えるときには、次のように教示をします。

  1. からだをリラックスさせるのに役に立つ、ちょっと変わった呼吸の仕方を練習してみよう。
  2. まず、片方の手をこんなふうにお腹のうえにおきます。 [実際にやって見せる]
  3.  そうそう。じゃあ、鼻から息を吸いましょう。息を吸うと、空気がいっぱい入ってきて、お腹がこんなふうに ふくらむよね。 [実際にやって見せる]
  4. 今度は、口から息をはきましょう。息をはくと、お腹がこんなふうにぐーっとへこんでくるね。 [実際にや って見せる]
  5. 3つ数えるよ。そのあいだ、ゆっくりゆっくり息を吸って。また3つ数えたら、ゆっくりゆっくり息をはいて。
  6.  はい、じゃあ一緒にやるよ。…よくできました!

自分で使ったり、子どもに教えるときには、やっぱり「吐く」方から伝えています。『ファーストエイド』にも「ゲームに取り入れてみましょう」という項目に

  • チューイングガムで風船をつくる。
  • 丸めた紙や脱脂綿を、テーブルの端から端に吹き飛ばす。
  • 息をふーっとはく登場人物が出てくるお話をする。

といった工夫が書かれていますが、どれも「吐く」ことですね。「タンポポの綿毛を吹く」のもけっこう好きです。病院では、長期入院の患者さんと散歩をして、タンポポを見つけるたびにいっしょにフーフーしていました。最初はほとんど息を吹くことができなかった人も「フーッ」と遠くに飛ばせるようになるにつれて、不安や緊張がゆるんでくるのです(タンポポ呼吸法と呼んでます)。

 

呼吸を感じるエクササイズ

呼吸を感じるエクササイズ (岩波アクティブ新書)
井上ウィマラ『呼吸を感じるエクササイズ』 岩波アクティブ新書、2004年

著者の井上ウィマラさんは、京都大学を中退した後、ビルマで出家して瞑想や呼吸法を学んだという方です。イギリスやアメリカで瞑想を指導していたこともあり、仏教だけでなく、哲学や心理療法にも詳しい方です。

この本には、自分や人の呼吸を観察する方法から、呼吸による気づき、ボディスキャンや瞑想など、呼吸を探求・考察するためのいくつものエクササイズが紹介されています。読みながら実際に自分で試してみて、呼吸を探求してみてください。「人生最後の呼吸」のエクササイズや、個体としての生死を超えた自然の流れを感じるエクササイズなど、単なるリラクセーション法としての呼吸法以上のことを教えてくれます。

 

呼吸入門

呼吸入門
斎藤孝『呼吸入門』角川書店、2003年

「息」とは一つの身体文化で、日本人は呼吸に関して固有の文化を持っていたのだと著者は書きます。そして、数千年の呼吸の知をとてもシンプルな形に凝縮したという呼吸法の「型」が提唱されています。

「鼻から三秒息を吸って、二秒お腹の中にぐっと溜めて、十五秒かけて口から細くゆっくりと吐く」

この呼吸法を毎日少しずつ練習することで、集中力が身につき、心のコントロールが容易になります。

手元にある本をめくると付箋がいくつか貼ってあったので、抜き書きしてみますね。

実は、呼吸を考える上で大切なのは、吸うことではなく、吐くことです。

やっぱり「吐く」ことが大事なんですね。

ゆったりとした呼吸が技として身について、響きのいい楽器のようなからだになると、それはもう「どこへでも持ち運び可能な寺院」を持っているようなものです。

声もきっとよくなると思います。カウンセラーにとって「声」は仕事道具のようなものなので、それを磨くためにも呼吸法は大事なのではないでしょうか。

からだの緊張がゆるんでいるかどうか、どれだけ響きのいいからだになっているかが、ハミングを通すとわかりやすい。

「ハミング」は呼吸力をつける効果的な訓練方法なのだそうです。倍音声明やホーミー(モンゴルの歌唱法)などとも似ているかもしれません。そういえばハミングをすることで幻聴が軽減する、といった研究をどこかで読んだ記憶もあります。

我流ですが、ときどきお風呂や部屋を真っ暗にして、ヨガのブラマリ呼吸法(蜂の羽音のようなハミングをする呼吸法)をすると、かなりすっきりします。

 

呼吸の本

呼吸の本
加藤俊朗・谷川俊太郎『呼吸の本』サンガ、2010年

「呼吸のレッスンCD付き」なので、実際にレッスンを受けているような感覚で取り組むことができます。また、詩人の谷川俊太郎さんが呼吸の加藤俊朗先生に質問をするというかたちで書かれていて読みやすい本です。

今ぱらぱらと読み返してみるとやっぱり、

吸って吐くから吐いて吸うへ。

と書かれています。「深呼吸」は息を吸ってから吐くやり方、呼吸法は吐いてから吸うやり方で、「胸」と「腹」の違いなんだそうです。どちらも気持ちを落ち着かせるにはいいとのこと。でも「丹田(へそ下三寸の人間の中心)」を感じるには、呼吸法の方が合っているんでしょうね。

「気柱の見方」なんていうのも紹介されていました。

 

自然呼吸法の本

自然呼吸法の本
ドナ・ファーリ『自然呼吸法の本』佐藤素子訳、河出書房新社、2011年

呼吸についてかなり詳しく描かれている本です。呼吸法のエクササイズもたくさん紹介されていますので、自分にあった呼吸が見つかるでしょう。自然な呼吸のしくみについて詳しく解説されているので、ちょっと読むのに骨が折れるかもしれません。俳優のボイストレーニング、体操やヨガの練習、ストレスマネージメントの方法など、いろいろな用途に使われているとのことです。

著者のドナ・ファーリさんは、ヨーガの教室を主催しているのだそう。

この本で「鼻洗浄(ネティ)」を知って、花粉症対策に試してみたことがあります。かつて禁煙したときには、片鼻交代呼吸法が役に立ちました。「火の呼吸(カパーラバーティ)」の方法なども載っています(火の呼吸と聞くとどうしてもヒクソン・グレイシーを連想してしまう)。

呼吸をするというのはこの世でもっとも単純なことです。吸って、吐く。まったく自由に呼吸していれば、息をコントロールすることも抑えることもありません。特に努力をしなくとも、息を吸い込み、息を吐き出すことができます。呼吸がそれほど単純なものなら、この世でもっともやさしいことだと思われるかもしれません。けれども、もし本当にそうだったら、この世に不幸な人も健康に悩む人もまるでみあたらないはずでしょう。息を素直に迎えいれる人は、支配しようとか執着しようとか押しのけようとかしない生き方をしています。これははたしてやさしいことでしょうか。呼吸の仕方には、その人の人生への取り組み方、生き方、人生にはつきものの変化への対応の仕方が、きっちりと反映されているのです。

 

***

本棚を見て、呼吸に関係してそうな本をいくつか取り出してみました。埃が立って呼吸にはあまりよくない感じですが、以下にリストアップしてみましょう。

『呼吸法の極意ゆっくり吐くこと』(成瀬雅春)、『センサリー・アウェアネス』(シャーロット・セルバー)、『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』(北川貴英)、『呼吸による癒し』(ラリー・ローゼンバーグ)、『ブッダの〈呼吸〉の瞑想』(ティク・ナット・ハン)、『氣の呼吸法 全身に酸素を送り治癒力を高める』(藤平光一)、『呼吸による気づきの教え―パーリ原典「アーナーパーナサティ・スッタ」詳解』(井上ウィマラ)

などなど、「呼吸」に関する本はたくさんありますね。

とりたてて「呼吸法」などと意識しなくても、自然と呼吸できるのがいちばんなのです。『センサリー・アウェアネス』という本の「呼吸を生きる実験」という箇所には次のように記されていました。

あるがままの呼吸に気づくためには、十分な安らぎと、何かを追い求めようとしない姿勢が必要です。そうしたことがどれほど難しいかはわたしも分かっています。呼吸に影響を与えず、ただそれが起こるにまかせ、起こらないものは起こらないのだと受け入れることは、本当にとても難しいのです。ですから、呼吸への取り組みの最初は、完全な「さりげなさ」を身につけることだと言えるでしょう。呼吸を見つめてそれに「何をしているの?」とたずねたりしないこと。深い呼吸、あるいは規則的な呼吸を要求しないこと。「何もしないこと」を身につけることから始めるのです。

ということで、「呼吸」についての本の紹介でした。

アメリカの軍人や警官は、緊急時にパニックを起こさず冷静に行動できるよう、呼吸法を練習しているそうです。自分にあった呼吸法をひとつ覚えて、練習しておくと、いざというときに役にたつでしょう。

そうそう、『達人伝』というマンガには、荘子の孫が祖父から伝授されたという「大呼吸」が登場します。窮地に陥ったら、とにかく深く深く息を吐き出して、それから新鮮な空気を吸い込むのです。

 

【註】

(1)井上ウィマラ『呼吸を感じるエクササイズ』

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